薬学 化学 カルボカチオンの安定性
◆ カルボカチオンの安定性
カルボカチオン(C+)はsp2混成軌道を持ち、3本の結合が結合角120°で同一平面に伸びており、その平面に対して垂直に空のp軌道が存在している。
以下では、カルボカチオンの安定性について解説する。
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カルボカチオンの安定性 電子供与,アルキル基,超共役,アリル・ベンジル,共鳴
★ 電子供与基であるアルキル基が多く置換するほどカルボカチオンの安定性は高くなる。
C+にアルキル基が結合すると、アルキル基のC-Hのσ結合の電子がC+の空のp軌道に分け与えられるような現象が起こる。この現象を超共役と呼び、アルキル基は電子供与基となる。
よって、カルボカチオン(C+)の安定性について、電子供与基であるアルキル基の置換数が多くなるほど、C+の正電荷が弱められ、C+の安定性は高くなる。
したがって、カルボカチオンの安定性とアルキル置換基の数について、安定性の高いものから、第3級>第2級>>第1級>メチル の序列である。
ただし、第3級カルボカチオンであっても、下記のようなビシクロ構造の橋頭位(橋のたもと)の炭素がC+となる第3級カルボカチオンは不安定なので生成しない。
C+はsp2混成軌道をとるが、sp2は3本の結合を結合角120°で同一平面に伸ばす形が安定である。ビシクロの橋頭位がC+となった場合、C+のsp2の3本の結合は同一平面に伸びる形を取れず、ビシクロ構造の維持のため無理して伸ばす形になるため不安定である。
★ アリルカチオンとベンジルカチオンは共鳴効果で安定性が高くなる。
カルボカチオンの中でも、C+がアリル位にあるアリルカチオンやC+がベンジル位にあるベンジルカチオンは共鳴によりπ電子が非局在化するので安定性が高くなる。
第1級アリルカチオンや第1級ベンジルカチオンはノーマルな第1級カルボカチオンと比べて安定性が高く、第2級に匹敵する。
第2級アリルカチオンや第2級ベンジルカチオンはノーマルな第2級カルボカチオンと比べて安定性が高く、第3級に匹敵する。
★ C+に窒素原子(アミン,アミド),酸素原子(ヒドロキシ,エーテル)が結合するとカルボカチオンの安定性が高くなる。
sp2炭素またはsp炭素に非共有電子対を持つ窒素原子(アミン,アミド)や酸素原子(ヒドロキシ,エーテル)が結合する場合、窒素原子や酸素原子による電子供与性の共鳴効果が発現し、この効果は電子求引性の誘起効果を上回り、結果として、sp2炭素またはsp炭素に電子供与性の電子効果を与える。
sp2炭素であるC+に非共有電子対を持つ窒素原子や酸素原子が結合すると、窒素原子や酸素原子による電子供与性の共鳴効果により、C+の安定性が高くなる。
ただし、窒素原子の中でもニトロ基は電子求引性の電子効果を発現し、C+の正電荷を強めてしまい、カルボカチオンを不安定にしてしまう。