フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に用いられるのはどれか 111回薬剤師国家試験問66の解説
111回薬剤師国家試験 問66
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の治療に用いられるのはどれか。
1つ選べ。
1 ゲフィチニブ
2 クリゾチニブ
3 ダサチニブ
4 セリチニブ
5 ルキソリチニブ
111回薬剤師国家試験 問66 解答解説
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の治療に用いられるのは、
選択肢3のダサチニブです。

以下で解説します。
フィラデルフィア染色体とは
フィラデルフィア染色体は、
9番染色体と22番染色体の一部が入れ替わってできる異常な22番染色体のことです。
このように、染色体の一部が切れて、
別の染色体にくっつく変化のことを転座といいます。
具体的には、
9番染色体のABL遺伝子と
22番染色体のBCR遺伝子がくっついて、
BCR-ABL融合遺伝子ができます。
ABLは、細胞内に存在する非受容体型チロシンキナーゼです。
BCR-ABL融合遺伝子から作られるBCR-ABLは、
ABLのチロシンキナーゼ活性が異常に持続します。
その結果、白血病細胞が増殖しやすくなります。
白血病の種類ごとにフィラデルフィア染色体陽性(Ph陽性)の割合は異なります。
・慢性骨髄性白血病:ほとんどの症例でPh陽性
・急性リンパ性白血病:小児ではPh陽性はまれ、成人ではPh陽性は30%ぐらい、高齢になるほど増える
・急性骨髄性白血病:Ph陽性はまれ
ダサチニブの作用
ダサチニブは、BCR-ABLタンパクのATP結合部位に結合して、
チロシンキナーゼ活性を阻害します。
チロシンキナーゼは、ATPを使って標的タンパク質をリン酸化します。
このリン酸化が、細胞増殖シグナルを伝えるきっかけになります。
ダサチニブはATPが結合する部位をふさぐことで、
BCR-ABLによるリン酸化を止める
→ 増殖シグナルが止まる
→ 白血病細胞の増殖が抑えられる
→ 白血病細胞にアポトーシスが誘導される
という作用を示します。
ダサチニブ(商品名スプリセル)は、慢性骨髄性白血病や、
再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の治療に用いられます。
ダサチニブは、BCR-ABLの活性型・不活性型の両方に結合できると考えられています。
イマチニブが主にBCR-ABLの不活性型構造に結合するのと異なります。
以下では他の選択肢について解説します。
1 ゲフィチニブ
ゲフィチニブ(商品名イレッサ)は、
EGFRチロシンキナーゼ阻害薬です。
EGFRは「上皮成長因子受容体」のことで、
細胞増殖に関わる受容体型チロシンキナーゼです。
EGFR遺伝子変異がある非小細胞肺がんでは、
EGFRシグナルが過剰に働き、がん細胞が増殖しやすくなります。
ゲフィチニブは、EGFRチロシンキナーゼを選択的に阻害し、
腫瘍細胞の増殖を低下させる薬です。
ゲフィチニブはEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんに用いられます。
2 クリゾチニブ
クリゾチニブ(商品名ザーコリ)は、
主に ALK、ROS1、MET などを阻害するチロシンキナーゼ阻害薬です。
ALK、ROS1、METは受容体型チロシンキナーゼです。
ALKやROS1の遺伝子が別の遺伝子とくっついて融合遺伝子ができることがあります。
この融合遺伝子からできるALKやROS1の融合タンパクは、
チロシンキナーゼ活性が異常に持続し、
がん細胞の増殖シグナルが持続的に活性化されます。
クリゾチニブはALK融合タンパクやROS1融合タンパクのチロシンキナーゼ活性を阻害して、
がん細胞の増殖を抑えるとされています。
クリゾチニブは、ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん,
ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに用いられます。
4 セリチニブ
セリチニブ(商品名ジカディア)は、ALK阻害薬です。
ALK融合タンパクのチロシンキナーゼ活性を阻害することで、
がん細胞の増殖を抑制します。
セリチニブはALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん に用いられます。
5 ルキソリチニブ
ルキソリチニブ(商品名ジャカビ)は、JAK1/JAK2阻害薬です。
JAKとは、Janus kinase:ヤヌスキナーゼの略で、
細胞内で働く 非受容体型チロシンキナーゼ の一種であり、
サイトカインや成長因子のシグナルを細胞内に伝えます。
JAKは、主に サイトカイン受容体 に非共有結合で結合しています。
サイトカインが受容体に結合すると、受容体の内側に結合しているJAKが活性化され、
受容体やSTATタンパクをリン酸化してシグナルを伝えると考えられています。
特にJAK/STAT経路は重要で、多くのサイトカインや成長因子のシグナル伝達に関わり、
造血、免疫、細胞生存などに関与します。
JAK-STAT経路が異常に活性化すると、
造血細胞の異常増殖や炎症性サイトカインの産生につながります。
ルキソリチニブはJAK1およびJAK2を選択的に阻害し、
STATなどを介するサイトカイン・成長因子シグナル伝達を抑制します。
ルキソリチニブは、骨髄線維症,真性多血症,
造血幹細胞移植後の移植片対宿主病に用いられます。