血管拡張作用、利尿作用等により急性心不全の症状を改善する組換え体医薬品 111回薬剤師国家試験問68の解説
111回薬剤師国家試験 問68
血管拡張作用、利尿作用等により急性心不全の症状を改善する組換え体医薬品はどれか。
1つ選びなさい。
1 インターフェロン ベータ
2 カルペリチド
3 コルホルシンダロパート
4 トルバプタン
5 フォンダパリヌクス
111回薬剤師国家試験 問68 解答解説
血管拡張作用、利尿作用等により急性心不全の症状を改善する組換え体医薬品は、
選択肢2のカルペリチドです。

以下で解説します。
カルペリチドは、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド、
つまり hANP の遺伝子組換え製剤です。
hANPとはHuman Atrial Natriuretic Peptideの略です。
心房性ナトリウム利尿ペプチドANPは主に心房から分泌されるペプチドホルモンです。
心房が血液で引き伸ばされる、つまり心房圧が上がると分泌が増えます。
たとえば心不全では、心臓に血液がうっ滞して心房が伸展されるため、ANPの分泌が増加します。
つまりANPは、体内でいうと、
「循環血液量が多すぎる」「心臓に負担がかかっている」ことを感知して、
余分な水分やNaを外へ出そうとするホルモンです。
カルペリチド(商品名ハンプ)はα型hANP製剤であり、静脈内投与され、
α型hANP受容体に結合し、
膜結合型グアニル酸シクラーゼを活性化させることにより細胞内のcGMPを増加させ、
以下の作用を発現します。
・血管拡張作用
静脈・動脈を拡張する
前負荷・後負荷を軽減する
心臓の仕事量を減らす
・利尿作用・ナトリウム利尿作用
腎臓からの水分・Na排泄を促進する
体液量を減らし、肺うっ血や浮腫を改善する
カルペリチドは血管拡張作用と利尿作用により、
心臓への負担を軽減し、
急性心不全における呼吸困難、浮腫、肺うっ血などを改善します。
以下では他の選択肢について解説します。
1 インターフェロン ベータ
インターフェロン ベータは、サイトカインの一種の糖タンパク質です。
遺伝子組み換え型インターフェロン ベータ製剤が、
多発性硬化症の再発予防または進行抑制を目的に、
皮下注や筋注で用いられています。
多発性硬化症とは、免疫の異常により多発的に脳や脊髄の髄鞘が壊される自己免疫疾患です。
多発性硬化症では、神経の情報伝達がうまくいかなくなり、
その結果、視力障害、しびれ、筋力低下、歩行障害など、さまざまな神経症状が出ます。
インターフェロンベータが多発性硬化症に有効な詳しい機序は完全には明らかではありませんが、
免疫調節作用、抗ウイルス作用、細胞増殖抑制作用などが関与するとされています。
3 コルホルシンダロパート
コルホルシンダロパートは、急性心不全に用いられる強心薬・血管拡張薬です。
特徴は、アデニル酸シクラーゼを直接活性化することです。
アデニル酸シクラーゼが活性化されると、細胞内 cAMP が増加します。
その結果、心筋収縮力は増強し、血管は拡張します。
コルホルシンダロパート塩酸塩製剤(商品名アデール点滴静注用)は、
急性心不全で他の薬剤を投与しても効果が不十分な場合に用いられますが、
組換え体医薬品ではありません。
4 トルバプタン
トルバプタン(商品名サムスカ)は、バソプレシンV?受容体拮抗薬です。
腎臓の集合管にあるV?受容体を遮断することで、バソプレシンによる水の再吸収を抑えます。
その結果、電解質排泄を増やさずに水だけを排泄する利尿作用、つまり水利尿作用を示します。
トルバプタンは、心不全の体液貯留改善に用いられますが、
組換え体医薬品ではありません。
5 フォンダパリヌクス
フォンダパリヌクスは、抗凝固薬です。
アンチトロンビンV(ATV)に高親和性に結合し、ATVの抗第Xa因子活性を増強します。
その結果、トロンビン産生が抑制され、血液凝固を抑えます。
フォンダパリヌクスNa製剤(商品名アリクストラ皮下注)は、
静脈血栓塞栓症の発現リスクの高い、
次の患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制に用いられます。
○下肢整形外科手術施行患者
○腹部手術施行患者
よって、フォンダパリヌクスは心不全の症状改善薬ではありません。