日本薬局方水酸化ナトリウムの定量 111回薬剤師国家試験問96の解説
111回薬剤師国家試験 問96
次の記述は、日本薬局方水酸化ナトリウムの定量に関するものである。この水酸化ナトリウム(NaOH:40.00)は不純物として炭酸ナトリウム(Na2CO3:105.99)のみを含むものとし、下線部イ及びエの時点をそれぞれ第一中和点、第二中和点とする。

問96 この定量法に関する記述として正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 日本薬局方において、下線部アの標準液の標定に用いられる標準試薬と0.5 mol/L 塩酸の標定に用いられる標準試薬は同じである。
2 下線部イでは、本品の量が異なっても第一中和点となる pH の値は変化しない。
3 0.5 mol/L 硫酸の代わりに 0.5 mol/L 硫酸とファクターが同じ 0.5 mol/L 塩酸を用いても、滴定量は下線部ウの液量と変わらない。
4 下線部エは、メチルオレンジのほとんどが化学構造bからaに変化した結果である。

5 空欄 オ に入れるべき数字は、80.00 である。
111回薬剤師国家試験 問96 解答解説
この定量法に関する記述として正しいのは、
選択肢1,2です。

選択肢1
1 日本薬局方において、下線部アの標準液の標定に用いられる標準試薬と
0.5 mol/L 塩酸の標定に用いられる標準試薬は同じである。
これは正しいです。
日本薬局方では、
0.5 mol/L 硫酸の標定にも、0.5 mol/L 塩酸の標定にも、
標準試薬として一般に 炭酸ナトリウム が用いられます。
選択肢2
2 下線部イでは、本品の量が異なっても第一中和点となる pH の値は変化しない。
これは正しいです。
第一中和点では、溶液中の主な酸塩基成分は 炭酸水素ナトリウム NaHCO3 になります。
NaHCO3は、
水中で電離して炭酸水素イオン HCO3−を生成します。
炭酸水素イオンは酸としても塩基としても働けます。
酸として働く場合
HCO3− + H2O ⇄ CO32− + H3O+
塩基として働く場合
HCO3− + H2O ⇄ H2CO3 + OH−
よって、NaHCO3は両性電解質です。
溶質として主に両性電解質であるNaHCO3だけが存在する溶液のpHは、
以下に示すとおり
炭酸 H2CO3のpKa1とpKa2の式として表されます。

炭酸では
pKa1 = 6.3 pKa2 = 10.3
ですので、
溶質としてNaHCO3だけが存在する溶液のpHは、

と計算されます。
このように、
溶質が1つの両性電解質だけの水溶液のpHは、
両性電解質の濃度に依存しません。
したがって、本問では、
本品の量が異ると、不純物の炭酸ナトリウムの量が異なり、
第一中和点において、NaHCO3の濃度が異なりますが、
第一中和点のpH の値はほとんど変化しないと考えられます。
選択肢3
3 0.5 mol/L 硫酸の代わりに
0.5 mol/L 硫酸とファクターが同じ 0.5 mol/L 塩酸を用いても、
滴定量は下線部ウの液量と変わらない。
これは誤りです。
0.5 mol/L 硫酸と 0.5 mol/L 塩酸は、
同じ mol/L でも 酸としての当量が異なります。
硫酸は 1 分子から 2 個の H? を供給します。
H2SO4 → 2H+ + SO42−
一方、塩化水素は 1 分子から 1 個の H+ を供給します。
HCl → H+ + Cl−
そのため、0.5 mol/L 塩酸を用いると、
必要な滴定量は 0.5 mol/L 硫酸の2倍になると考えられます。
選択肢4
4 下線部エは、メチルオレンジのほとんどが化学構造bからaに変化した結果である。

これは誤りです。
正しくは、
「下線部エは、メチルオレンジのほとんどが化学構造aからbに変化した結果である」です。
本問の定量法のおいて、
メチルオレンジが第二中和点を検出するための指示薬として用いられ、
液が持続する淡赤色を呈したときを終点としています。
メチルオレンジは、酸性側で赤色、塩基性側で黄色を示します。
メチルオレンジの構造のaとbを見比べると、
bはNがNHになっているところがあります。
これは溶液が酸性になるのに伴いNがプロトン化されたことによります。
よって、
aは塩基性で多い構造、bは酸性で多い構造です。
第二中和点で溶液は酸性側に移るため、
メチルオレンジは a から b に変化して淡赤色を示します。
選択肢5
5 空欄 オ に入れるべき数字は、80.00 である。

これは誤りです。
空欄オには 40.00が入ります。
本問は、0.5mol/L硫酸1mLの炭酸ナトリウムの対応量を求める問題です。
水酸化ナトリウムと硫酸の反応式は
2NaOH + H2SO4 → Na2SO4 + 2H2O
です。
反応式より、
水酸化ナトリウムと硫酸はモル比2:1で対応します。
これに基づいて、
0.5mol/L硫酸1mLの水酸化ナトリウムの対応量を求めます。
0.5mol/Lの硫酸液1mLに含まれる硫酸は0.5mmolです。
0.5mmolの硫酸は1.0mmolの水酸化ナトリウムに対応します。
本問では水酸化ナトリウムの分子量を40.00とするので、
1.0mmolの炭酸ナトリウムの質量は、
1.0mmol×40.00 (g/mol)= 40.00mg
したがって、
0.5mol/L硫酸液1mLの水酸化ナトリウムの対応量は
0.5mol/L硫酸1mL = 40.00mg NaOH
です。
★ 公式による対応量の計算
本問の対応量は下記の計算式を用いても計算できます。

本問では、水酸化ナトリウムと硫酸の反応について、
水酸化ナトリウム(目的成分)の化学当量は2、
硫酸(標準液の成分)の化学当量は1です。
硫酸標準液の濃度は0.5mol/L、
水酸化ナトリウムの分子量は40.00であるので、
求める対応量は、式を用いて以下のように計算できます。

111回薬剤師国家試験 問97の解説
問97は日本薬局方水酸化ナトリウムの定量に関して
不純物である炭酸ナトリウムの含量を計算する問題でした。
解説は下記のリンク先のページにあります。
本問の滴定法の原理を詳しく解説していますので、
参考にしてみてください。
111回薬剤師国家試験 問97の解説ページ